心の中は落書きだらけ

とても目覚めの良い土曜日があった。

朝6時、びっくりするほどぱっと目が覚めた。目覚ましは鳴っていない。(そもそも予定がない休日だったのでセットすらしていない。)寝起きが良いと気分も良い、ということで、朝からなんだか特別なことがしたくなって、起きて速攻、卵と牛乳と砂糖をかき混ぜフレンチトーストを仕込んだ。食パンに卵液を浸し終えたあと、少し考えて、せっかくならプルプルにしたいと思い、冷蔵庫にそれらをしまってもう一度布団の中に逆戻りする。完全に冴えてしまった頭で、前日の霜降り明星annを聴きながら布団の中でだらだらし、1時間半くらいたった頃、やっと起き上がって、コーヒーの準備をしつつフライパンでバターを溶かした。こういうのこそが、最高の休日だと思う。

気分がいい日にしたくなることはいくつかあって、その一つが、「食パンにちょっと一手間加えて、アレンジして食べること」だ。ほかには、宝くじを一枚だけ買ってみること(200円で買えるスクラッチを買う。その場で削れるのが良い。)、少し遠くまで散歩して、帰りにセブンに寄って、アイスコーヒーをガムシロップ入りで飲みながら帰ること、などがある。

こういう小さな幸せをかき集めて生きていきたいと常々思っている。それで幸せだし、大きな刺激とか、劇的な何かとか、そういうものは別にいらない。今のところは。

毎日毎日、代わり映えのしない日々を送っているのに、それがつまらないとか退屈だとか全く思わないのは、同じ屋根の下に家族がいるからで、寂しいと感じることがあまりないからなのかもしれない。「誰かと繋がりたい」という気持ちが芽生えてこないのも、これが原因の一つなのだろうか。そんなことを考えてしまうきっかけとなった出来事が、最近あった。まだ心の中がグズグズの状態なので、もう少し乾いてきたら、ここに書こうと思う。カサブタが覆い始めた頃にでも。

まあそんなわけで、一人暮らしがしたいという気持ちは前からあったが、最近はより真剣に検討し始めた。暇さえあればSUUMOで物件ばかり見ているし、生活費のやりくりについて、細々とシミュレーションしたりしている。社会人2年目の手取りってどんなもんなんだろう。来年って税金いくら引かれるんだ???

 

先週、『ドライブ・マイ・カー』を観に行った。村上春樹の原作という情報しか入れていない状態で何となく観に行ったのだが、これが本当に凄かった。静謐で淡々とした雰囲気のまま進んでいく作品で、上映時間も3時間と長めなのだが、いつの間にかぐんぐんと引き込まれていて、鑑賞中、身体が溶けていくような感覚にすらなった。劇中劇での手話の場面、飛び交う異なる言語、瀬戸内海の穏やかな波、雪の中に散る切り花、煙草の煙、など、作品の中には、忘れられない、心にそのまま焼き付けておきたい絵や音というのがいくつもあって、帰り道、すぐに地下鉄に乗るのをためらってしまい、少し遠回りをして歩いてしまったりした。この作品を映画館で見ることができて本当に良かったと思う。

濱口監督の作品がすごく好きだということにも気がついた。夏休みに早稲田松竹で上映していた『ハッピーアワー』、観に行っておけばよかったなと今更ながら後悔している。

 

最近見たものの話でいうと、「ツギクル芸人グランプリ」で優勝した金の国が素晴らしかった。2本とも面白かったが、特に東京の朝の地下鉄が舞台になっていた2本目のコントは、笑いながら少し泣きそうになってしまった。

冷たくて、張り詰めていて、無関心が蔓延ったあの空間。大学一年生の春学期、ほぼ毎日乗ることになった満員の通勤電車の中で、大人たちが皆どこか疲れた顔をしていること、それでも容赦無く人が押し込まれてくることに、毎朝体力と心が削られていたことを思い出す。そんな満員電車の中で、人の感情が動く瞬間や人の温かさが描かれていたことに、かなりグッときてしまった。「色々な感情が詰まった4分間」という審査員の評が良かった。そういうコントにわたしは弱い。

 

そういえば今更だけど、キングオブコントがめちゃくちゃに楽しみだ。マジで優勝してくれと思ってるコンビが、決勝メンバーの中に少なくとも3組いるんだけど、どうすればいいですか?